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2012-2013年度 活動報告

卓話 菅木悠二氏 淀川中央動物病院 院長

「動物病院の実態 」

 

 

淀川中央動物病院

院長  菅木悠二氏

 

 

 

 

我々獣医師の仕事は大きく分けて以下の分野に分けられます。一つは私がやっている家庭の飼育動物に対して診療を行う小動物臨床、牛や馬など産業動物に対して診療を行う大動物臨床、研究や新薬開発などに携わる研究職、そして保健所や税関などで働く公務員などです。

獣医師になるには6年制の大学を卒業し、国家試験を受けて合格することでなれます。進路はそれぞれ獣医師免許を持つことで選ぶことが出来ます。多くの学生は5年生の後半から6年生の前半の間に進路を決めます。

動物病院は「サービス業」として位置づけられて、管轄は農林水産省です。

人間の病院とは違い、自由診療なので、診察日時や診療科目、診療費は個々の動物病院で自由に決められています。

動物病院の数は業界では飽和状態と言われていますが、全国的にゆるやかな増加傾向となっております。動物病院は全国に約1万施設存在します。うち法人の診療施設は約3,000施設、個人での診療施設は約7,000施設です。ここ大阪では法人の診療施設が244施設、個人の診療施設が451施設と若干法人施設の割合が全国よりも多くなっています。

近年、都心では他の動物病院の診療圏(徒歩まなどで診療に連れて来れる範囲)は重なり合い、間違いなく飽和状態になっていると言えます。地方ではまだ開業の余裕が都心よりは十分にあるため、開業の地を考えるにあたってハイリスクな都心より、リスクの低い地方での開業を視野にいれる獣医師が増えてきています。

都道府県の総世帯数を動物病院数で割った数字の全国平均は1動物病院たり5,616世帯、大阪府の平均は6,490世帯、東京都の平均は5,345世帯、ちなみにおとなり兵庫県は5,656世帯です。なぜか大阪府は都心なのに1動物病院あたりの世帯数が兵庫県より多いです。個人の見解としては、動物病院はサービス業の要素があり、かつ診療の責任が院長に重くのしかかるため、いろいろ騒がしくなりやすい大阪での開業に抵抗感を持つのだと思います。友人の獣医師達が「大阪は大変だから開業するなら他の県でやりたい」と言っているのを良く聞きますのであながち間違いではないと思います。

個々の動物病院の比較を見てみます。まずは動物病院で働く獣医師の数です。

1動物病院あたり獣医師1人全体の72%を占が、勤務医1人を雇う2人獣医師体制の動物病院は全体の18%です。動物病院に院長を含めた獣医師が3人以上いるところは10動物病院中1つだけと言うことになります。皆さんが見かける動物病院のほとんどが獣医師1人もしくは2人でやっている動物病院と言うことです。獣医師以外の従業員として動物看護士を2人か3人雇い運営する形態をとっているところが多いです。

 

動物病院の売り上げについてお話しいたします。1動物病院あたり1年間の総売り上げです。年間総売り上げ500万未満の動物病院は全体の7.3%、500万~700万が全体の4.9%、700万~1000万が全体の4.6%、1000万~2000万が全体の24%、2000万~3000万が全体の20.5%、3000万~5000万が全体の21.1%、5000万~1億が全体の11.5%、1億~3億が全体の6.0%、年間3億円以上の売り上げがある動物病院は0.1%です。

多くの動物病院の年間総売り上げは、グラフで示している通り1,000万~5,000万の枠が多いです。我々動物病院業界では年間総売り上げがだいたい平均3,000万が通説になっています。5,000万いったらなかなか順調だねぇと言われます。

個々の動物病院により差はありますが、売り上げの約半分が原価や医療環境の維持費、光熱費などで消え、残り半分のうち更に半分が人件費として消えます。ですから利益は売り上げの約1/4です。

獣医師の初任給は月に22~25万円、動物看護師は月に14~16万円が一般的です。また関東よりも関西の方が獣医師は不足しているので、待遇は関西の方が良いです。

動物病院が開いている曜日と時間について。20年程前は平日開いていて日祝日が休診日と言うスタイルが殆どでしたが、いまでは顧客である飼主様の来院のしやすさに重点を置く動物病院が大多数となり、日祝日も開ける施設が多くなりました。

診療時間はスライドに書かれている、午前の診療は朝9時から昼12時、午後の診療は夕方4時から夜7時までが多いです。また夜9時まで診療している施設や、夜間専門で診療する動物病院も今ではあります。

診療対象動物について、これは多くの動物病院が診ることが出来る動物の種類のことです。獣医師は多くの動物種に医療行為を行うことが出来ます。ただある程度の枠は各病院設定しています。一般的には犬、猫が主体で、あとはそこで働く獣医師が診療できると考えている動物種が加えられます。

最近では他の動物病院との差別化の一環として都心を中心に爬虫類や鳥専門と言って看板を上げている動物病院も出てきました。

続いて診療科目についてお話します。人の病院では、たとえ町の開業医であっても、すくなくとも内科、外科、整形外科、眼科、耳鼻科、産婦人科、小児科などに分かれています。一方動物病院は基本的には全ての診療科目を診なければなりません。これにプラスして動物の種類が変わるので私たち診療する獣医師の頭の中は運動会状態です。例えば下痢をした8才のチワワが来たら、まず犬であることプラス消化器内科の思考になり、目をショボショボさせた子猫が来たら、猫であることプラス眼科プラス小児科の思考になります。ちなみに人間以外全て同じ病気になるといったことは当然なく、犬でなりやすい病気、猫でなりやすい病気、はたまた草食動物であるウサギの病気など全く違います。動物の種類によっては使ってはいけない薬などもあります。人間と同じような病気もあります。猫の腎不全や糖尿病は良く遭遇しますし、犬も白内障になります。「動物は病気しないものだと思っていた」とおっしゃる飼主様もいらっしゃいます。

最近では整形外科や循環器科、眼科などの専門性をうたった動物病院も出てきましたので、手におえない専門的な知識や技術が必要な症例に対しては、そういった医院を紹介する形を取るようになってきました。

診療費について。動物病院は自由診療なので、診療費はそれぞれの動物病院で自由に決められるので施設ごとに異なっています。

動物病院の一日は朝8時~8時半ごろから始まり、入院の処置、ミーティング等を行います。9時から外来診察を行います。外来をしていない昼の間は手術時間です。夕方4時半から午後の外来診察を行います。そして外来終了後、朝と同じように入院動物の処置等を行います。夜9時ごろ一通りの仕事が終わり帰宅します。その時重症患者が入院していれば泊まり込みをすることもあります。

今後動物病院にもとめられること。それは従来型の「とりあえず治療する」ではなく、しっかりと原因を追究し、その原因にあった治療を複数飼主様に提案し、飼主様が納得して頂ける治療を実践して行くことだと思います。そして動物と言う人の優しさが形になったものを癒すことにより、幸せな社会作りに貢献して行きたいと思います。

近年獣医療も華々しい発展を遂げ、それに伴った獣医師側の思考も発展して行かなくてはなりません。私もそのことを肝に銘じ、正しい診断、正しい治療、初心を忘れず謙虚に病気という小さな自然と向かい合って行くことを誓い、日々の診療を行っていきます。

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