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2017-2018年度 活動報告

卓話「“アジアに医きる”奮闘記」

2017年11月8日

卓話「“アジアに医きる”奮闘記」

フリーランス顎顔面口腔外科医師  岩田雅裕氏

 

171108岩田雅裕様
 

 カンボジアはタイとベトナムの間にある人口1700万人、日本のほぼ半分の面積をもつ王国です。1970年から始まった内戦による国土の疲弊、そして1975年からのポル・ポト派による独裁政治、クメール・ルージュ。知識層である医師、教師らの大半は虐殺されました。私が初めて訪れた時は、世界最貧困国、医療レベル最低国でした。

私が活動を始めたのは2000年。知人から「唇裂口蓋裂手術を待つ子供がたくさんいる。カンボジアで唇裂口蓋裂手術や他の手術を手伝わないか」との話からです。当時、カンボジアの口腔外科医療は、内戦により壊滅した状態のままでした。当初、私は日本で総合病院の外科部長を務めながら、カンボジア・シェムリアップの小児病院に年3~4回1週間滞在で、唇裂口蓋裂や他の顎顔面口腔外科手術を行っていました。渡航費、滞在費もすべて自腹、もちろん手術代も無料。当時、シェムリアップ市にCTはありませんでした。撮影が必要な場合、車で数時間かけてプノンペンに行くしかありません。医療保険制度がないカンボジアでは、CT撮影も自費、高額です。1か月の給与ほどの撮影費用では、ほとんどの患者さんは撮影を拒否してしまいます。現在でもその状況はあまり変わりません。画質の悪い単純X線写真と超音波検査のみの診断で、術前の診断が困難なことも多々ありました。ほとんど経験と勘に頼る診断・手術でした。

私が活動を始めて、今年ではや18年の月日が経ちました。通算の訪問回数も100回を超え、現在では年8回、カンボジアに滞在し活動を続けています。カンボジアは現在でも貧しい国ですが、首都プノンペン、そしてシェムリアップではかなり発展してきています。ただ街から数km離れれば、10年前と全く変わらない貧困、そして地方都市では全く変わらない状況が続いています。医療現場はというとあまり変化はありません。確かに街では免許を持った医師がかなり増えました。しかし病院は今でも患者さんや家族であふれかえっています。お金がないため治療を受けられない人が多いのも変わりません。病院の設備も手術器具も揃っていません。悪性腫瘍の患者さんで、生命の危険を説明して説得しても金銭的な理由で治療を拒否され、心残りのまま帰国することも普通のことです。やはり医療現場の貧しさは相変わらずです。

小児病院での顎顔面領域手術はほとんど私がこの病院に行くようになり、カンボジア人スタッフと手探り状態で始めました。やっと診察、診断、手術計画の流れが軌道に乗りました。活動で最も重要なのは継続です!カンボジアでは小児病院以外でも多くの州立病院や国立病院、NGO病院から手術依頼を受けて頑張っています。私のもう一つの重要な活動は、カンボジア人医師の養成です。現在、プノンペンを訪れた時には、3つの大学で、学生への講義や専門医への講義、手術指導を行っています。私の専門は顎顔面口腔外科、顔や顎、頸部の外科手術です。カンボジアで行った手術は1700件を超え、そのうち、唇裂口蓋裂手術41%、腫瘍手術32%、顔面骨骨折10%、耳鼻科手術8%、顎関節手術4%でした。

現在では、私の活動を支援する一般社団法人ウイズアウトボーダーや多くの賛同してくださる方々の手弁当で、カンボジアのみならずミャンマー、ラオス、中国、フィリピン、スリランカ、ブータン、ナイジェリアなどでの手術支援も行うようになり、日本以外での手術も3000件を超えました。そして私のカンボジアでの活動も、カンボジアの発展とともに地方へと足場を移しつつあります。

私は世界の多くの国で無償医療支援活動を行ってきました。その活動の中で多くのことを教えられ、学ぶことができました。今回海外の医療事情、医療支援の現場を紹介するとともに、急激に変わりゆく途上国医療現場の中で、支援について考えてきた経験をお話しします。

 

 

 

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