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2017-2018年度 活動報告

「出前授業」職業奉仕活動

2018年2月21日(水)

180221出前授業 授業風景2

 

 

 

 

 

 

「出前授業」

職業奉仕活動の一環として、

箕面市立萱野東小学校 6年生の生徒の方に

当クラブ会員が出前授業を行いました。

講師:林 尚美会員(弁護士)

演題:弁護士は何をしているか?

 

1 皆さん,ドラマの「99.9」は見たことがありますか。松潤が演じているのが弁護士です。彼は,刑事事件専門の弁護士です。99.9の有罪率であれば,0.1だけが無罪ということになります。刑事事件で,無罪になるのはとても難しいということです。

 

2 私は,日弁連消費者問題対策委員会の副委員長をしていいます。主に製造物責任にかかわる事件や欠陥住宅にかかわる事件をしています。また,公益通報者保護法の改正に関し,内閣府の消費者委員会専門委員も務めています。

 

3 弁護士になるには,司法試験に合格しなければなりません。司法試験は,私が受験していた時代は超難関試験で,100人に1人くらいしか合格しませんでした。何度も挑戦して,漸く合格することができました。失敗の連続でした。

無事,司法試験に合格し,修習を終えて2回試験に合格すると裁判官,検事,弁護士のどれかになることができます。裁判官も検事も国家公務員です。他方,弁護士は自由業です。聞こえはいいですが,ほとんどが零細民間事業者です。

 

4 弁護士は,主に裁判にかかわっています。皆さんが,授業で習ったとおり,日本の裁判は,「三審制」をとっているので,地裁で負けても,控訴して高等裁判所でもう一度事実関係について争うことができ,最後に法律の適用・憲法上の問題があるときに,最高裁で判断してもらうことができます。最高裁が「最後の砦」と言われるゆえんです。

 

また,裁判所は,三権分立の1翼を担っています。国会は,国民の選挙で選ばれた国会議員から構成されていて,唯一の立法機関つまり「法律」を制定することができます。行政権は,内閣に属していて,法律の定めるところにより,内閣総理大臣とその他の国務大臣から構成されていて,内閣総理大臣は国会議員の中から国会の決議により指名され(憲法67条),内閣は一般の行政事務の他,法律を誠実に執行する,外交関係の処理,条約締結,予算作成をすることなどをその職務としています(憲法73条)。裁判所は,他の機関と独立して,「一切の法律上の争訟」を裁判する機関となっていて,すべての裁判官は『その良心に従い独立して職務を行い,憲法及び法律にのみ拘束される』とされています(憲法76条3項)。

 

5 裁判所が取り扱っているのは,「法律上の争訟」で,民事事件,行政事件,刑事事件,家事事件など様々です。刑事事件の手続きについてみると,検察側は,国家権力を使って捜査をして,被疑者を「逮捕」し,容疑が固まると勾留請求をして,最大20日取調べをして,起訴相当であると判断すれば,起訴します。被疑者は,起訴されると,「被告人」と称され,裁判所の公判で手続きがなされて,裁判所により判決が下されることになります。

被疑者は,一旦逮捕されると,一般の面会は制限され警察官が立ち会います。手紙も全て検閲されます。証拠隠滅のおそれがあるからです。被疑者・被告人は,弁護士と会って相談することができます。これを「接見」といいます。弁護士接見には,警察官の立会はなく,回数制限も時間制限もありません。ただ,弁護士には国家権力がないので,強制的に調べることが出来ません。例えばコンビニで撮っているビデオを提出してもらおうとしても,警察に渡したとかプライバシーの問題があるなどと言って断られることがあります。

被疑者はたとえやっていなくても,連日の長時間に亘る取調べに疲弊してしまい,心が折れて,「やりました」という自白調書が作られることがままあります。これが冤罪事件の始まりです。自白調書を取られると,ひっくり返すことはとても難しいです。冤罪にならないように,毎日被疑者を励ましアドバイスをするのが弁護士の役割です。

私が担当した事件で本人は無罪だと主張している件がありました。私は,毎日警察署に接見に行き,「やっていないのであれば,自白の調書にサイン・指印をしてはいけないよ。」と20日間励まし続け,無事,自白調書を取られることなく,釈放された事件がありました。後日,元被疑者から,感謝の手紙が届きました。途中で何度も心折れそうになったけど,接見に来てくれたので,自白調書はとられなかった,ありがとうございましたという内容でした。このようなお紙を頂戴すると,弁護士をやっていてよかったなあと思います。今でも,元被疑者からの手紙は,机の中に大切に保管しています。こんなに感謝されることは,滅多にありません。

 

6 私は,高校生まで,天文学者になりたいとか,宇宙飛行士になりたいとか思っていました。そして,もともと理系で,親が薬学部に行くようにと言うので,理科系の勉強をしていました。しかし,何か違うなと思い,方向転換し文科系に変更して,法学部に入学しました。そこで,一生できる仕事として「弁護士」になろうと思うようになりました。周りに弁護士さんはいなかったので,本当に漠然とした目標でした。漠然とした目標だったためか,受験ではとても苦労しました。

実際「弁護士」になってみると,弁護士の仕事は,大学生のころ思い描いていたものとは全く違っていました。地道にパソコンと向き合って書類作成をする作業に追われています。時々,欠陥住宅の現地調査に行ったり,破産会社の工場を見るために遠方まで出かけたりすることはあります。嫌なこともいっぱいあますし,失敗して怒られたこともあります。しかし,私は,弁護士という仕事を選んで良かったなと思っています。嫌なことは,そのうち忘れます。失敗をしたら,十分に反省をして,二度とそれを繰り返さなければいいのです。「賢者は歴史から学ぶ。愚者は経験から学ぶ。」という言葉があります。如何せん,私は賢者ではないです。しかし,愚者でもいい。経験から,二度と同じ失敗をしないようにしていけばいいと思っています。

大事なのは何をしたいか,そのためには何をすべきかしっかり見極めることです。今,皆さんは小学校6年生という節目にあるわけですが,今日の出前授業が,それを考える機会になっていたらいいと思います。

ご清聴,ありがとうございました。

 

以上

 

 

 

 

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