卓話「視覚に障害のある方々の現状と日本ライトハウスの事業について」
2015年9月16日
「視覚に障害のある方々の現状と日本ライトハウスの事業について」
社会福祉法人
日本ライトハウス情報文化センター
館長 竹 下 亘 氏
はじめに
日本ライトハウスは大阪で生まれ、育てていただいた民立民営の社会福祉法人。
20歳で失明した岩橋武夫が1922年(大正11年)創業し、1935年(昭和10年)、阿倍野にライトハウス会館を開設。これが日本初、世界13番目のライトハウス。
日本の福祉の多くが大阪から始まった。毎日新聞も1922年(大正11年)、堂島で日本初の点字新聞を発行し、以来、今日まで一号の休みなく発行している。不肖私も、毎日新聞点字毎日の記者として働いた後、縁あって日本ライトハウスに転職した。
私の勤務する施設、情報文化センターは肥後橋交差点の角にある。点字、録音、電子書籍の製作・貸出を行い、パソコンや電子機器、スマホの利用支援をしているが、その内容は次回11月18日の例会でさせていただきたい。
1.視覚に障害のある方の現状
視覚障害者は、一般に「障害者手帳を持つ」人を想定しており、その場合、全国に31万5,500人、400人余りに一人いる。
その中で、「全く見えない」「明暗が分かる」「目の前で動くものは分かる」程度の人が1、2級で65%、「目は見えるが、メガネをかけても見えにくく、日常生活に困難のある」弱視の人が35%となっている。
しかし、日本眼科医会が公表している国内の視覚障害者164万人。その理由は、近年、中高年で病気(緑内障や糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性)等で見えにくくなる方、目の病気の治療をしながら見えにくさで困っている方が非常に増えているから。障害者手帳を持つ方の内、69%が65歳以上だが、これも視覚障害の方が高齢化しているのみならず、中高年で視覚障害になる方が増えているため。
一方、18歳未満は手帳所持者の内、わずか4,900人。医療や衛生が進んだためで、良いことには違いないが、この方々は社会のマイノリティになりがちなので、理解と支援が必要。
さらに、最近、盲ろう(視覚と聴覚の2重障害)の方が想像以上に多いことが分かってきた。14,000人。ヘレン・ケラーのように幼児期から盲ろうになる方よりも、中途で障害を持たれる方(視覚障害の方が中途で聴覚障害、その逆など)が多い。東大教授の福島智さんなどが活躍し、次第に社会参加と理解が広がりつつある。
このように視覚障害と言っても百人百様であることを理解していただきたい。視覚障害と言うと、白杖で歩き、点字を読み書きし、盲学校を出ている、という理解をされがちだが、それは一部でしかない。こうした多様な障害と、それに伴う多様な困難やニーズをお持ちの方々が支援を必要としており、それに応えるのが日本ライトハウスの使命。
2.日本ライトハウスの事業について
日本ライトハウスは大阪府内に4つの事業所を持ち、サービスを展開している。
詳しくはパンフレットをご覧いただきたい。
*本部・視覚障害リハビリテーションセンター (鶴見区、JR放出駅)
*情報文化センター (西区、地下鉄肥後橋駅)
*点字情報技術センター(東大阪市、JR放出駅)
*盲導犬訓練所(千早赤阪村)
これら4事業所の提供しているサービス・事業を、視覚障害の方々の生活上のニーズに合わせてご紹介したい。
(以下、Cはセンターの略)
(教育) 情報文化C、点字情報技術C=視覚支援 学校で使われる教科書・教材製作
(情報) 情報文化C、点字情報技術C=点字・録音・電子図書の製作・貸出、情報機器の紹介・講習、福祉をはじめ一般情報の提供
(リハビリテーション)視覚障害リハビリテーションC=単独(白杖)歩行、点字・PC・情報機器の操作、身辺処理(家事や料理等)、
盲導犬訓練所=盲導犬歩行
※「視覚障害リハビリテーション」は日本 で初めてライトハウスが導入・実施した。
(就労) 視覚障害リハビリテーションC=職業訓練 (就職・中途視覚障害者の就労継続や復職 支援)、軽作業
(日常生活・地域生活) 視覚障害リハビリテーションC=ガイド ヘルパー・ホームヘルパー派遣、日中活動
(創作、レクリエーション、スポーツ等)、視覚と知的障害などを合わせ持つ方の生活介護施設
本日は視覚に障害のある方の現状と困難の多様性、そしてそうした方々が一般社会で、普通の生活を送れるようにするための支援とサービスの多様性をご理解いただきければ幸いです。