卓話 「検察よもやま話」
2015年5月27日
「検察よもやま話」
公証人
元最高検察庁検事
井阪 博様
(関洋輔会員紹介)
本日は,元検事としての経験を踏まえ,刑事司法における検察の役割について,お話します。
1 検察と警察は,どう違うのか。
⑴ 検察の組織
最高検察庁(1庁)-高等検察庁(8庁)-地方検察庁(50庁)-区検察庁(438庁)
⑵ 検察官の特徴
① 刑事司法の要
捜査から裁判,刑の執行に至る刑事手続の全てに関与する。
② 公訴権限
起訴・不起訴の決定ができる。
③ 独任官庁
各検察官が単独で行政機関を構成し,独立して権限を行使できる。知事や市長と同様です。
2 検察の仕事は,人を罰することか。
検察官の事件処理(平成25年統計)
一般刑事事件数 約89万
起訴=20% (公判請求9%,略式請求11%)
不起訴=80%
この統計の結果は,検察の仕事の大部分が,「人を処罰すること」ではなく,「人を赦すこと」であることを物語っています。
3 無罪率が極めて低いのは,何故か。
確定裁判の無罪率-0.03%
検察が「疑わしきは罰せず」を実践しているからです。
4 検察は,正義の味方か。
検察は,「不偏不党,厳正公平」を旨とする公益の代表者であり,「事件の真相を解明して犯罪者を処罰する」という正義のみならず,「犯罪者の人権をも擁護する」という正義をも共に実現することが求められています。
5 検察は,無実の証拠を収集し,無罪の主張をすることはあるか。
警察捜査を指導し,冤罪(身代わり犯人を含む)を防止するためには,無実の証拠を収集することも重要です。
6 検察官が容疑者の自白獲得に熱心なのは,何故か。
自白が,事件の真相の解明のみならず,犯人の更生と被害者の救済にとって不可欠であるからです。
7 裁判において,自白の任意性(供述の自由)が争われることが多いのは,何故か。
刑事裁判における犯罪事実の認定には,証拠法則の壁があり,任意性(供述の自由)に疑いのある自白は,証拠にならないとの法則があるからです。
裁判員裁判制度の下,皆様方も裁判員に選任されるかも知れません。刑事手続について少しでも興味を抱いて頂けたならば,幸いです。
ご静聴,ありがとうございました。